甲胄かっちゅう)” の例文
甲胄かっちゅうの擦れ合う音をたてて、宮様ご警護の竹原家の家来が、館の庭を往来ゆききしている姿が、簾越すだれごしに見えるのへ、隆貞は視線を投げていた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今一度、龍顔を拝したくは存じますが、武装の甲胄かっちゅう、畏れ多く存じますれば、これにてお暇乞いとまごいをいたして立去りまする
日本名婦伝:静御前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(22)mace ——先に鉤釘かぎくぎのついたほこで、片手で振り、甲胄かっちゅうを破るなどに用いられた中世の武器。
その声につれてだんずるびわの音は、また縦横じゅうおうにつき進む軍船ぐんせんの音、のとびかうひびき、甲胄かっちゅうの音、つるぎのり、軍勢ぐんぜいのわめき声、大浪おおなみのうなり、だんうら合戦かっせんそのままのありさまをあらわしました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
やがて軍からひき離れ、郎党六騎をひきつれて、二階堂ヶ谷へ引っ返して行く、淵部義博の甲胄かっちゅう姿が、星月夜の下に認められた。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
五郎右衛門は、ほのおをついて、城から半具足で討って出たが、大太刀をふるって、たおむまで、敵の甲胄かっちゅう武者十八人まで斬り伏せて戦死したという。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
数十人の六波羅の甲胄かっちゅう武士が、鋭い眼を八方へ配りながら、関門を通る人々の姿を、仔細に厳重に調べている様子が、殺伐の気を二倍にした。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
野人やじん、礼をしらず、剣を帯して、殿に昇り、なお、甲胄かっちゅうの兵を、院庭に忍ばせておくなど、言語道断であります。よろしく、典刑てんけいを正し、厳科げんかに処すべきものでしょう』
毘沙門びしゃもんとも見えれば矢大臣の像とも見えるし、またただの甲胄かっちゅうをつけた武人とも見える。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)