甘言かんげん)” の例文
(いちど敵対を示した以上、うかと甘言かんげんに乗って、安土の召しに応じなどしたら、その場で刺殺しさつされるか投獄ときまっている)
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やくざ男の甘言かんげんに迷わされて、身をあやまつようなことがあれば、生涯浮ぶ瀬のないきびしい制裁を受けることになってもいるし、娘たち自身も、その制裁を怖るるよりは
大菩薩峠:08 白根山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
(あの杉次郎という若侍は、どうやら奥様を甘言かんげんでまるめて、お金や物品ものを持ち出すらしい)
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
土地の醇朴じゅんぼくな陶工たちが金銭で恩を売る買手の甘言かんげんに、迷わされては気の毒の至りではないか。小石原は今こそ、その歴史の曲り角に立っているのを自覚しているであろうか。
小鹿田窯への懸念 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
丈五郎の甘言かんげんにのせられたのである。この物語の初めに、初代が荒れ果てた海岸で、赤ちゃんをお守りしていたと語ったのは、この間の出来事で、赤ちゃんというのは次女緑であった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
探偵小説家海野十三氏によって書かれた芝公園事件への見透みとおしであるが、裸体女の殺害犯人は二十日検挙された——品川駅で知り合った被害者を就職を世話すると甘言かんげんをもって芝公園に誘い出し
呂宋兵衛は、ここぞ出世の緒口いとぐちと、あらんかぎりの巧舌こうぜつ甘言かんげんで、お目見得めみえした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、甘言かんげんをにおわせながら、陣刀じんとうをふりかぶった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)