琴爪ことづめ)” の例文
と、咲耶子さくやこは、ねじとられた手をしずかにもぎはなした。そしてゆびの先の琴爪ことづめいて、高蒔絵たかまきえのしてある爪筥つめばこのなかへ、一つひとつていねいに入れた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸子はげんの上に琴爪ことづめめた手を載せたまま、あれからざっと半年間会わなかった雪子の様子を見上げたが、内気なようで花やかなことの好きなこの妹が
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
紺地の素袍すおうに、烏帽子えぼしを着けて、十三げん端然ちゃんと直ると、松の姿にかすみかかって、琴爪ことづめの千鳥がく。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
別に、附属品を収めた小型の桐のはこがあって、中に琴柱ことじ琴爪ことづめとが這入っていた。琴柱は黒っぽい堅木かたぎの木地で、それにも一つ一つ松竹梅しょうちくばいの蒔絵がしてある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)