玉川たまがわ)” の例文
千年の銀杏いちょうけやき、杉など欝々蒼々うつうつそうそうと茂った大国魂神社の横手から南に入って、青田の中の石ころ路を半里あまり行って、玉川たまがわかわらに出た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
玉川たまがわの方です。骸骨がいこつのパチノとおすみという日本の女との間に出来た子供のことについて調べに行くと云っていましたよ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
桂君は、自分が探偵団にはいっただけでなく、やはり玉川たまがわ電車の沿線におうちのある、級友の篠崎始しのざきはじめ君をさそって、ふたりで仲間入りをしたのです。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
宮城野みやぎのの萩、末の松山まつやまの松、実方さねかた中将の墓にうる片葉のすすき野田のだ玉川たまがわよし名取なとりのたで、この五種を軸としたもので、今では一年の産額十万円に達していると云う。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
此地眺望最も秀美、東は滄海そうかい漫々まんまんとして、旭日きょくじつ房総ぼうそうの山に掛るあり、南は玉川たまがわ混々こんこんとして清流の富峰ふほうの雪に映ずるあり、西は海老取川えびとりがわを隔て云々、大層賞めて書いてある。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
玉川たまがわの川原では工兵が架橋演習をやっていた。あまりきらきらする河原には私の捜すような画題はなかったので、川とこれに並行した丘との間の畑地を当てもなく東へ歩いて行った。
写生紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
翌々日の新聞は、彼が其日行った玉川たまがわの少し下流で、雷が小舟に落ち、へさきに居た男はうたれて即死、而してともに居た男は無事だった、と云う事を報じた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
川上かわかみの空に湧いて見えた黒雲は、玉川たまがわの水をうて南東に流れて来た。彼の一足毎に空はヨリくらくなった。彼は足を早めた。然し彼の足より雲の脚は尚早かった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)