猩紅熱しょうこうねつ)” の例文
のどや胸や頭や心臓をたえず悩んだ。ちょっとした風邪かぜも気管支炎に変ずる恐れがあった。猩紅熱しょうこうねつにかかって死にかかったこともあった。
十二年の間、重吉は彼を積極的に生かそうとする意志が一つもない環境の中で、猩紅熱しょうこうねつから腸結核、チフスと患って、死と抵抗して来た。
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
亡母の一周忌も半月繰上げて、ホンの型だけ済ませ、ガラクタな手荷物などをまとめたが、出発の前日になって上の男の子が猩紅熱しょうこうねつかかってしまった。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
そうするうちにあの十年の戦争になりまして、良人——近衛このえの大佐でした——もまいります。そのあとに悴が猩紅熱しょうこうねつで、まあ日夜ひるよるつきッきりでした。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
取りえず櫛田くしだ医師の来診を求めたところ、猩紅熱しょうこうねつの疑いがあるから明日あしたなおよくましょうと云って帰った。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
猩紅熱しょうこうねつは殆ど無く、流行することは断じてない。ジフテリヤも極めて稀で、これも流行性にはならぬ。
やがてそこに何かふきでもの——猩紅熱しょうこうねつとか潰瘍とかのような——でもするような、むずがゆさと病的症状の漠然とした感じをうけていたが、ついに風向きの具合で
「Y・M・C・Aの方から、仏蘭西フランスへ行くことにしてすっかり準備した時させられたのです。チフスや猩紅熱しょうこうねつの。——だからうつりますまい」
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
幸子は去年悦子の猩紅熱しょうこうねつの時に雇ったあの「水戸ちゃん」に、出来れば今度も来て貰うように昨日看護婦会へ申込んで置いたところ、好い塩梅あんばいに都合を附けて
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
嵯峨さが嵐山あらしやま、平安神宮は駄目だめだとしても、せめて御室おむろの花にでも間に合ってくれないか知らん。………そう云えば去年、悦子が猩紅熱しょうこうねつかかったのも今月であった。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
………何でもこの間からお嬢ちゃんが猩紅熱しょうこうねつでおやすみになっていらっしゃいますそうですが、病人と云うのんは、そのお嬢ちゃんのことやのうて、耳鼻咽喉じびいんこう科へ入院してなさるお方のことで
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)