猟虎らっこ)” の例文
旧字:獵虎
壁には、いろんな外套やマントが、ずらりとかかっていたが、その中には猟虎らっこの襟のついたのや、ビロードの折り返しのついたのもまじっていた。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
それをまたその人々の飼犬らしい、毛色のいい、猟虎らっこのような茶色の洋犬かめの、口の長い、耳の大きなのが、浪際を放れて、いわの根に控えて見ていた。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
チョンチョンと下足札を鳴らすが、小屋は満員で、騒然としていて、顔役は、まがい猟虎らっこの襟付外套で股火をし、南京豆の殼が処嫌わず散らかっているだけだ。
山峡新春 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
岸本が少年の頃に流行した猟虎らっこの帽子なぞをかぶったこの人の紳士らしい風采を思出すことが出来る。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黒光りのする店先の上がりがまちに腰を掛けた五十歳の父は、猟虎らっこの毛皮のえりのついたマントを着ていたようである。その頭の上には魚尾形ぎょびけいのガスの炎が深呼吸をしていた。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
うですな。海豹あざらし猟虎らっこです」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
猟虎らっこのついたのであろうが、綿いれのであろうが、浣熊あらいぐまや狐や熊などの毛皮外套であろうが、要するに
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
旦那の友だちは皆、当時流行の猟虎らっこの帽子をかぶり、ぶりのよい官員や実業家と肩をならべて、権妻ごんさいでもたくわえることを男の見栄みえのように競い合う人たちだからであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
丁度それは二番目の兄の森彦が山林事件の総代として始めて上京して、当時流行はやった猟虎らっこの帽子を冠りながら奔走した頃のことで。その後、宗蔵の方は学校からある紙問屋へ移った。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
猟虎らっこの襟をつけた紳士連にも出喰わした。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
面白いと思うことは、僕の阿爺おやじが昔流行はやった猟虎らっこの帽子をかぶって、酒を飲みに来た頃から、その家は有るんだトサ。そこへ叔父を誘って行こうじゃないか……一夕昔を忍ぼうじゃないか
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あれは旦那が二十代に当時流行の猟虎らっこの毛皮の帽子をかぶった頃だ。
ある女の生涯 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)