とぼ)” の例文
土器かわらけの燈明は、小泉を継がせるはずのお鶴の為に、最後の一点の火のようにとぼった。お倉は、この名残なごりの住居で、郷里くにの方にある家の旧い話を始めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
部屋々々の洋燈は静かにとぼった。お倉は一つの洋燈の向うに見える丸蓋まるがさの置洋燈の灯を眺めて
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黄色く日中にとぼ蝋燭ろうそくの火を眺めながら、三吉は窓に近い壁のところに倚凭よりかかっていた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
線香の煙に交る室内の夜の空気の中に、蝋燭らふそくとぼるのを見るも悲しかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あかしは奥深くいて、あそこにも、こゝにも、と見て居るうちに、六挺ばかりの蝋燭らふそくが順序よく並んでとぼる。仏壇を斜に、内陣の角のところに座を占めて、金泥きんでいの柱の側にを合はせたは、住職。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)