為立した)” の例文
旧字:爲立
妻は立派な文藝家に為立したてゝ遣る。そしてその作を公衆に説明して聞かせて遣る。こつちが妻にしてゐる以上は余程の長所がなくてはならん。
そういう仏典の新しい語感を持った言葉を以て、一首を為立したて、堅苦しい程に緊密な声調を以て終始しているのに、此一首の佳い点があるだろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しと/\階子はしごを下りて参り、長手の火鉢の前に坐りましたが髪が、たてでお化粧しまい為立したてで、年が十九故十九つゞ二十はたちというたとえの通り、実に花を欺くほどの美くしい姿で
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
安政四年になって銀鎖ぎんぐさり煙草入たばこいれ流行はやった。香以は丸利にあつらえて数十箇を作らせ、取巻一同に与えた。古渡唐桟こわたりとうざんの羽織をそろい為立したてさせて、一同にあたえたのもこの頃である。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
勝久はこの歌に本づいて歌曲「まつさかえ」を作り、両国井生村楼いぶむらろうで新曲開きをした。勝三郎を始として、杵屋一派の名流が集まった。曲は奉書摺ほうしょずりの本に為立したててかくわかたれた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)