とほ)” の例文
とほるばかりのわかに身体を浸し温めて、しばらく清流の響に耳をなぶらせる其楽しさ。夕暮近い日の光は窓からさし入つて、けぶる風呂場の内を朦朧もうろうとして見せた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
空は濃く青くとほるやうになつた。南のかたに当つて、ちぎれ/\な雲の群も起る。今は温暖あたゝかい光の為にされて、野も煙り、岡も呼吸し、踏んで行く街道の土の灰色に乾く臭気にほひ心地こゝろもちが好い。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)