源因げんいん)” の例文
それでも久しぶりにこう落ち合ってみると、兄弟のやさしい心持がどこからか自然にいて出た。場合が場合なのもその大きな源因げんいんになっていた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
結果は頓着しません、源因げんいんを虚偽に置きたくない。習慣の上に立つ遊戯的研究の上に前提を置きたくない。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私が東京へ来て下宿を出ようとしたのも、これが大きな源因げんいんになっているように思われます。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
偏屈の源因げんいんであるから、たちまち青筋を立てて了って、あてにしていた貴所あなた挙動ふるまいすらも疳癪かんしゃくの種となり、ついに自分で立てた目的を自分で打壊たたきこわして帰国かえって了われたものと拙者は信ずる
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
それが源因げんいんかどうかは疑問だが、私の興味は往来で出合う知りもしない女に向かって多く働くだけであった。先生の奥さんにはその前玄関で会った時、美しいという印象を受けた。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
驚き給うな源因げんいんがある。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
わが感じは外から来たのではない、たとい来たとしても、わが視界によこたわる、一定の景物でないから、これが源因げんいんだと指をげて明らかに人に示すわけに行かぬ。あるものはただ心持ちである。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)