温習さらい)” の例文
それから握飯の針のようなのを二ツずつ貰って食べる、帰ると三味線のお温習さらいをして、そのまま下方したかたの稽古にられる。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腹一杯遣って退けたと思うと元の鳴鳳楼の座敷へ環り、「あら儂のではお厭なの」、のお温習さらいがまた始まる。
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
一方で『地球の上に国というくうには』何とか歌うと、女生みんなが扇を持ってったりしゃがんだりぐるり回ったりしとるから、踊りの温習さらいかと思ったら、あれが体操さ! あはははは
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
このお温習さらい程私の嫌いな事はなかったが、之をしないと、じきポチをすてると言われるのが辛いので、渋々内へ入って、かたの如く本を取出し、少しばかりおんにょごおんにょごとる。それでおしまいだ。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
その手拭が、娘時分に、踊のお温習さらいに配ったのが、古行李ふるこうりの底かなにかに残っていたのだから、あわれですね。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
温習さらいかけた奥の小座敷へ俊雄を引き入れまだ笑ったばかりの耳元へ旦那のお来臨いでと二十銭銀貨に忠義を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
夫から庭で一しきりポチと遊ぶと、母が屹度きっと温習さらいをおという。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
過日いつぞやその温習さらいの時、諸事周旋顔に伝六木戸へ大胡坐おおあぐらを掻込んでいて、通りかかった紋床を、おう、と呼留め、つい忙しくって身が抜けねえ、切前にゃあ高座へ上るのだから
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「実は、あの、小婢こどもを買ものに出しまして、自分でお温習さらいでもしましょうか、と存じました処が、窓の貴方、しのぶの露の、大きな雫が落ちますように、螢が一つ、飛ぶのが見えたんでございますよ……」
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)