温厚おとな)” の例文
温厚おとなしい性質きだてりん一歳ひとつ違ひのその妹よりも𤍠の高い病人で居ながら、のぞく度に自分に笑顔を作つて見せるのであつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「どうして達雄さんのような温厚おとなしい人に、あんな思い切ったことが言えたものかしらん」こう森彦が言出した。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大坂のは親の為めに芸者になつたと云つてましたが顔もよし温厚おとなしさうな女でしたから、帰りたいと云ふのは帰して大坂の方を取れと云ふと橋本も其気になり帰すことにしましたが、サア路用が要る
温厚おとなしい性質だから会社でも受がかった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
捨吉はそんなことを思い付いて、皆が休息と遊戯を楽む中で、温厚おとなしい友達を向うへ廻した。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
あとで思へば「亜米利加アメリカ物語」の材料を人知れず作つて居ながら、たゞ僕等の前では温厚おとなしい貴公子で、文学のぶの字もまつたく言はなかつたのは一人僕等を俗物だと思つて居たのであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
せん良人をつと温厚おとなしい学者肌の人であつたが、ある旅先で悪友に誘惑そゝのかされてうつかり勝負事に関係しため、すくなからずあつたその財産がすべて失はれて居た事を良人をつとの死後に発見して途方に暮れた夫人は
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)