淵源えんげん)” の例文
せんさく好きな老人などは突拍子もないような書物など持ち出して来て、事件の淵源えんげんを考証したり解剖してみせたりするのである。
長屋天一坊 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
アルプス山の大欧文学に於ける、わが富嶽の大和民族の文学に於ける、淵源えんげんするところ、関聯するところ、あにすくなしとせんや。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
伝統は、失わんとするが故に、改めて愛することを強いられた心にてられる。『千載集』はあらゆる意味において、中世和歌伝統の淵源えんげんとなった。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
即ち天皇の信仰は、少くともこの乱の淵源えんげんを深く顧みたときの憂悩に発すると私は推察申し上ぐるのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
フェノロサはゴンスに対するこの論文において遠く日本画発達の淵源えんげんさかのぼりてよくこれを批判したり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
当時発行された唯一ゆゐいちの新聞であり、その評論の載つたのは、千六百六十五年三月九日だと云ふのだから、作家の評論を利用するのも、ずいぶん淵源えんげんは古いものである。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから無意識哲学全体の淵源えんげんだといふので、さかのぼつて Schopenhauerシヨオペンハウエル を読んだ。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かくの如く全力を傾倒して国際問題を鋭意研究したのはと本と青年時代からの夙志であったが、一時人生問題に没頭して全く忘れていたのが再燃したには自ずから淵源えんげんがある。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
われわれは淵源えんげんとして夢殿の救世観世音くせかんぜおんを持つ。此の東方精神の造型的顕現の特質は幾多の起伏を超えて今新らしくわれわれの未現の世界に於いて再び精神の造型化にあらわれようとしている。
しかし、この剣法の淵源えんげんは、必ずしも自斎の独創ではなかった。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
コレ君ガ緒余ナリトイヘドモ、マタ以テソノ博学ノ翁ニ淵源えんげんスルヲ見ルニ足レリ。然レドモ君マタ文ヲクス。文名世ニ高キモシカモ或モノハ深クソノ学アルヲ知ラズ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「でも、淵源えんげんがあろうが」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)