海面うみづら)” の例文
ただぽかんと海面うみづらを見ていると、もう海の小波さざなみのちらつきも段〻と見えなくなって、あまずった空がはじめは少し赤味があったが、ぼうっと薄墨うすずみになってまいりました。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夕凪ゆうなぎ海面うみづらをわたりてこの声の脈ゆるやかに波紋を描きつつ消えゆくとぞみえし。波紋はなぎさを打てり。山彦やまびこはかすかにこたえせり。翁は久しくこの応えをきかざりき。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この時岩かどにとまりいたる兀鷹はげたか空を舞い、矢のごとく海面うみづらり魚を捕えたちさる。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
七月の陽が、海面うみづらをもくばかり高くなった頃、淡の輪の海上は黒煙くろけむりにみちていた。毛利方の船はほとんどといってよいほど焼き沈められた。風浪がつよい日なので、炎は高く壮観をきわめた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白い波頭なみがしらとが、灰色の海面うみづらから迫つて来る。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
海面うみづら見ればかげ動く
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
前は青田、青田が尽きて塩浜、堤高くして海面うみづらこそ見えね、間近き沖には大島小島の趣も備わりて、まず眺望ながめには乏しからぬ好地位を占むるがこの店繁盛の一理由なるべし。
置土産 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
柔和な海面うみづら
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)