海苔粗朶のりそだ)” の例文
この殿にまうでて見れば、あなかしこ小松叢生むらおひ、にい寄る玉藻いろくづ、たまたまは棹さす小舟、海苔粗朶のりそだあひにかくろふ。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あの船や鴎はどこから来、どこへ行ってしまうのであろう? 海はただ幾重いくえかの海苔粗朶のりそだの向うに青あおと煙っているばかりである。……
少年 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
親仁はうしろへ伸上って、そのまま出ようとする海苔粗朶のりそだの垣根のもとに、一本二本咲きおくれた嫁菜の花、あしも枯れたにこはあわれと、じっと見る時、菊枝は声を上げてわっと泣いた。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この殿にまうでて見れば、あなかしこ小松叢生ひ、辺にい寄る玉藻いろくづ、たまたまは棹さす小舟、海苔粗朶のりそだあひにかくろふ。
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
折しも風立って来たからさっなびき、颯と靡き、颯と靡く反対の方へ漕いで漕いで進んだが、白珊瑚しろさんごの枝に似た貝殻だらけの海苔粗朶のりそだうずたかく棄ててあるのに、根を隠して、薄らあおい一基の石碑が
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この裏を行抜ゆきぬけの正面、霧のあやも遮らず目の届く処に角が立った青いもののちらばったのは、一軒飛離れて海苔粗朶のりそだの垣を小さく結った小屋でく貝の殻で、その剥身むきみ屋のうしろに、薄霧のかかった中は
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海苔粗朶のりそだに汐の立ちて寒き夜は地酒もがもと父のらすに
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)