流説るせつ)” の例文
時も時ではあり、熱病の熱が再発したように、この流説るせつはぱっと拡がり、かつ一般に信じられていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
越中のいたる土地に大兵を上陸させん——という流説るせつをほんとに信じて、狼狽ろうばいしておるらしいとのこと
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんで武力もない朝廷に謀反などを。……いや、もしその声ありとせば、事を好む人間どものあらぬ流説るせつにちがいないわ。——さような者を取締まるこそ、六波羅の任。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いやしくもけいらは、戦いの後ろにあって、国内の安定と民心の戦意を励ます重要な職にありながら、何で先に立って、不穏ふおん流説るせつを行い、朝野の人心を惑わしめたか」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵国のうちに、あらぬ流説るせつをまいて、その結果を破るという手段は、古今、東西、変りはない。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柴田をも難じておるので、柴田から出た流説るせつとは誰も思うまいが、それは皆、勝家がさせておる反間苦肉はんかんくにくてまちがいあるまい。大評議前の謀略戦じゃよ。小細工はやらせておけ。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸家の内事を訊ねたり、何かの流説るせつを行わせたりするには、恰好な老人であった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これも世の流説るせつではありましょうが、近頃、こんな沙汰も耳にしました。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、遭難そうなん当時の一と頃、世上にかまびすしく聞えた種々な取沙汰を今更のように思い出して、その流説るせつにまどわされて、きょうまで官兵衛に抱いていた誤った認識をそれぞれ心のうちで急に是正ぜせいしていた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
流説るせつであろう」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)