泰然自若たいぜんじじゃく)” の例文
最後にいたりながら泰然自若たいぜんじじゃくとして落着きはらい、死を見ること帰するがごとく、従容しょうようとして船と共に沈めるもの数十名の多きに達したという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
白雲も久しぶりで江戸前の料理に逢い、泰然自若たいぜんじじゃくとして御馳走を受けていましたが、今宵は、いつものように乱するに至らず、ひきつづいて駒井甚三郎のうわさ
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
戦争があっても、泰然自若たいぜんじじゃくとしているのが大国民の襟度きんどだ。事変は一時的のものだよ。無論これをしのぐのに国家総動員で全力を尽すけれど、もう一方芸術も大切だいじだ。
妻の秘密筥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そして、泰然自若たいぜんじじゃく——天なり命なりと達観してしまッたように、あぐらをかいて動きません。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
泰然自若たいぜんじじゃくとしてたゞ一人ひとり玄関指してまいりますと、表に居ります数多あまたの罪人が、「旦那、危ねえ、危ねえ、抜いてら/\、そうれやッつけろ」と気早きばやな連中は屋敷の内へ飛込もうと致します。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
洗いざらしのぼろきれよりもなおきたならしい。この姿にくらべると、大きな芭蕉の葉のずたずたに裂かれながらも、だらりと、ゆるやかに垂れさがった形には泰然自若たいぜんじじゃくとした態度が見える。
枯葉の記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「四郎さんこそ、相当なもんだ。この騒ぎだというのに、泰然自若たいぜんじじゃく……」
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
にんじんは中庭の真中に、へだたりを取って、じっとしている。危険に面して、自分ながら泰然自若たいぜんじじゃくたることに感心し、またそれ以上、ルピック夫人が打つことを忘れているのは不思議ふしぎでならぬ。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
操縦席の中尉は泰然自若たいぜんじじゃくとして
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかるに彼の精神をみ得るものは、彼が眉間みけんに傷をうけ、しかもそれを茶坊主輩の手よりうけながら、なお泰然自若たいぜんじじゃくとしていたのを見て、心ある者は泣かずにおられぬ。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
眼の色を変えて詰め寄せて来ました時に、道庵先生は泰然自若たいぜんじじゃくとして盃を挙げ
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
泰然自若たいぜんじじゃくの積りですが、変ですか?」
負けない男 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)