汽笛ふえ)” の例文
「あぶねえあぶねえ。冗談じゃねえ。汽笛ふえを鳴らさねえもんだから反響がわからねえんだ。だからおかに近いのが知れなかったんだ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
山の手寄りの駅の空では赤や緑の電灯でんきが深紫の闇の中に煌々と二列に綴られていた。何かまたほうほうと汽笛ふえのけはいもした。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
汽船は救助の汽笛ふえを鳴らし、汽缶に熱湯を煮えただらせ、怒濤をいて無二無三に先へ先へと進みはしたが嵐と波に遮られて同じ所ばかりを漂った。
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
汽笛ふえなんか鳴らしたから不可いけなかったんです。……かしいだ原因はまだ判然わかりませんが、船底の銅版あかと、木板いたの境い目二尺に五尺ばかりグザグザに遣られただけなんです。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
岬の雑草ざつさうと雲のあざやかさ汽笛ふえ太く吼えて挨拶す汽船ふね
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
汽笛ふえを鳴らすと矢鱈やたらにモノスゴイが、鳴らさないと又ヤタラにさびしいもんだなあ」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
夕凪ゆふなぎの沖に帆あぐる蜜柑みかんぶね、暮れて入る汽笛ふえ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)