水鶏くひな)” の例文
旧字:水鷄
それにしてもあの離座敷は! 夜も水鶏くひなの啼く声の絶えないあの離座敷は! そこで始めて私はその本家の娘といふかの女を見たのではなかつたか。
あさぢ沼 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
……水鶏くひなはしるか、さら/\と、ソレまた小溝こみぞうごく。……うごきながら静寂しづかさ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
水鶏くひなが鳴いてゐる
都会と田園 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
またそのなつかしい水鶏くひなの声を耳にしよう筈はない。また私達の恋を世間からかくして呉れた蘆荻や水草の緑がありやう筈はない。あたりはさびしくなつてゐる。
あさぢ沼 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
まつすぎ田芹たぜり、すつとびた酸模草すかんぽの、そよともうごかないのに、溝川みぞがはおほふ、たんぽゝのはなまめのつるの、たちまち一しよに、さら/\とうごくのは、ふなどぜうには揺過ゆれすぎる、——ひる水鶏くひなとほるのであらう。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
水鶏くひなが 啼いた
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
水鶏くひなの声——嘴を半ば水の中に入れて雄を呼ぶといふ雌の啼声。朝の深い露。そこから土手の上までは何うしても足をぬらさずには行けないやうな田のくろの中の道。
あさぢ沼 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)