気作きさく)” の例文
いつも留守るすがちな叔父がその日はちょうど内にいて、食事中例の気作きさくな話をし続けにしたため、若い人の陽気な笑い声が障子しょうじに響くくらい家の中がにぎわった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
気作きさくな心から軽口かるくちなどを云つてまぎらして居る内に、三人目の男の児を生んだ。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
と、三斎老人、例の気作きさくな調子で、じかに声をかける。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
庄太郎は元来閑人ひまじんの上に、すこぶる気作きさくな男だから、ではお宅まで持って参りましょうと云って、女といっしょに水菓子屋を出た。それぎり帰って来なかった。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ寝ていらっしゃい。寝ていても話は出来ましょう」と、さも気作きさくに云う。余は全くだと考えたから、ひとまず腹這はらばいになって、両手であごささえ、しばし畳の上へ肘壺ひじつぼの柱を立てる。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また何かしらしゃべらないでは片時かたときもいられないといった気作きさくな風があった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)