たぐひ)” の例文
その世にもたぐひのない真珠の光りは、丁度姫がその時に薔薇の為にハラ/\とこぼした涙と同じやうに輝いて居ります。姫の涙にも、月が一つ/\写つて居ります。
青白き公園 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
この意富多多泥古といふ人を、神の子と知れる所以ゆゑは、上にいへる活玉依いくたまより毘賣、それ顏好かりき。ここに壯夫をとこありて、その形姿かたち威儀よそほひ時にたぐひ無きが、夜半さよなかの時にたちまち來たり。
我は嘗てダンテの詩をもて天下にたぐひなきものとなしき。さるを今アヌンチヤタが藝を見るに及びて、その我心に入ること神曲よりも深く、その我胸に迫ること神曲よりも切なるを覺えたり。
実に昨日のたぐひではありませなんだ。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
數條のみち、小房多き數軒の家あり。その壁には丹青の色殘れり。エルコラノの市の天日に觸るゝ處は唯だこれのみなりといへば、工事の未だはかどらざることポムペイのたぐひにあらずと覺し。