ここで捕えられてはならない、そう思ったので、杉永の死躰に別れを云い、刀を拾い草履を捜して、泣きながらそこを逃げ去りました。
仏庵が死んでから四日めに当る、同じ正月の六日の夜半、その「むさし屋」の寮が自火で焼け、焼け跡から三人の死躰が出た。
「黙っているつもりだったんですが、それも無責任じゃないかと思って、お話しするわけなんですが、じつは死躰があがらなかったんです」
抱えていた小さな包が落ち、提灯もとり落しそうになったが、そのとき初めて、そこに横たわっている死躰をみつけた。
「——わしも心配はしていたが、まさか死んでいようとは思わなかった、死躰もわからずじまいだったというが……まだわしには本当とは思えない」