死躰したい)” の例文
ここで捕えられてはならない、そう思ったので、杉永の死躰したいに別れを云い、刀を拾い草履を捜して、泣きながらそこを逃げ去りました。
失蝶記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
仏庵が死んでから四日めに当る、同じ正月の六日の夜半、その「むさし屋」の寮が自火で焼け、焼け跡から三人の死躰したいが出た。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「黙っているつもりだったんですが、それも無責任じゃないかと思って、お話しするわけなんですが、じつは死躰したいがあがらなかったんです」
雨の山吹 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
抱えていた小さな包が落ち、提灯もとり落しそうになったが、そのとき初めて、そこに横たわっている死躰したいをみつけた。
あすなろう (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「——わしも心配はしていたが、まさか死んでいようとは思わなかった、死躰したいもわからずじまいだったというが……まだわしには本当とは思えない」
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「よくごらんなされ、ここが——」と十左衛門は杖で地面を打った、「ここが七十郎の死躰したいを捨てたところです、七十郎はここで、野晒のざらしになったのですぞ」
「あとから検視が来る、それまで死躰したいに手を付けてはならない、家の中もそのまま、慎しんで待っておれ」
「城は焼け落ちたので、死躰したいはずいぶん念いりに捜してみたが、みつからなかった、せめて遺品のはしきれでもあれば、……なんとか討死ということにもできたのだが」
日本婦道記:春三たび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
親きょうだいの死躰したいもわからないと知ると、好きなだけこの家にいるがよい、と云ってくれた。
榎物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
たつ女は躊躇ちゅうちょした。部屋もむさくるしいし、息をひきとったばかりで、死躰したいもまだきれいにしてない。また当人が甲斐にみまわれることをひどく心苦しく思っていたから。
大鹿の死躰したいのそばへおちつくと、甲斐は「くびじろ」といって、その大鹿のくびへ手をやった。
死ぬとすぐに、他の者にはわからないように注意して、死躰したいを差配の家へ運んだ。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
小机の上に香炉が煙をあげてい、火鉢の脇に、娘が俯伏うつぶせに倒れていた。千之助は棒立ちになり、上からじっと見おろしていたが、長い経験で、それがもう死躰したいであるということは一と眼でわかった。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
四人は死躰したいとなってから初めて、それぞれの家従に渡されたのです
死躰したいは海へ流されたのだろう、数日にわたって海も捜索された。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
死躰したいはどんなだった」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)