此間このあいだ)” の例文
「ないことはあるまい。此間このあいだ××さんが話して下すった口を、お前はなぜ断って了ったのだい。俺にはどうもお前のやることはさっぱり分らない」
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此間このあいだから学校へ通っている。乃公は作文と習字が上手になりたい。先生は乃公を敏捷はしっこいといって褒めた。勉強すれば大臣になれるかも知れないと言ったが、当にはならない。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此間このあいだ野球の勝負へ、一番好きなものを賭ける約束で、僕が勝つと、塩豆を買って来るじゃないか、そんなものはきらいだって言うと、でもこれは私が一番好きですからと言うんだ
青い眼鏡 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
船『此間このあいだ、根岸の旦那と、植木やの親方の来ました時、後で大笑いなのです。』
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
「おお、よく御存じで。此間このあいだ一度、軟派なんぱの事件で始末書を取った奴です」
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
両人様々に証拠をとりて詫言わびごと申せしゆゑ、久政も黙止もだしがたく、然らばとて免許ありて差置かれけるに、此間このあいだ信長陣替の時丁野ちょうの若狭守と共に討つて出で合戦し、織田勢あまた討捕りしかども却て
姉川合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
どうかして此間このあいだの様に、彼の口が節穴の真下へ来ないかと、その偶然を待ちこがれていなかったとは云えません。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ちいさ子供こどもぐらい厄介なものはあるまい。乃公おれの家へ此間このあいだ親類からお客さんが来た。きいちゃんという女の子とそのお母さんとである。このきいちゃんのお蔭で乃公は遠眼鏡と空気銃を損してしまった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
此間このあいだふっと、見世物みせものというものに気がついたのですよ。そしてね、すばらしいことを思いついたのですよ。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此間このあいだから百合子さんと百合子さんのお母さんが乃公の家に泊っている。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「あなた、今奇蹟が御入用じゃないんですか。だが、あなたはそれを買うおあしを持って在っしゃるかしら。此間このあいだも云った通り一万円なんです。びた一文かけてもいけないんです」
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
老人はやっぱり、此間このあいだの窓から半身を出して、私の顔をジロジロ眺めながら、答えた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
此間このあいだからの出来事を、みんな夢ではないかと変な気持になったことも度々であった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それは、父が東京にいたからだ、とは考えられないだろうか。蓑浦君、僕の父はね、僕にちっとも知らさないで、此間このあいだからずっと、この東京のどこかの隅に隠れているかも知れないのだよ
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私はお前をいじめに窘め抜き、わがらせに恐わがらせ抜いた上で、おもむろにお前の命を奪おうと思っていたのだが、此間このあいだからお前達の夫婦仲を見せつけられるに及んで、お前を殺すに先だって
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)