此室このへや)” の例文
此室このへやはいろんなものがあつて危いから向方へ行かう、と云ひながら彼が弟を抱へて座敷へ行くと綾子も光子も伴いて来た。
眠い一日 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「キヨ、いいかい。知れるとうるさいから此室このへやからトランクだのをはこんだことは、誰にも云っちゃいけないよ。いいかい」
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
或時あるとき此室このへや手拭てぬぐい幾筋いくすじ掛けてあるかと問へば、彼は廊下を四つ打つた。けれども、手拭は三筋より無い。さらに聞直しても矢はり四つだと答へる。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
此室このへやは大変にほひがする様だが、御前おまへあたまかい」と聞いた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
就中なかんずく面白いのは、例の狐狗狸式こくりしきに物を当てさせる事で、例へば此室このへやに女がるかと問ひ、居ない時にはかれが廊下をとんと一つ打つ。居る時にはとん/\と二つ打つと云ふたぐいだ。
雨夜の怪談 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)