檣頭しょうとう)” の例文
少なくも自分の主観の写生帳にはちゃんと青い燈火が檣頭しょうとうにかかったように描かれているから仕方がないと思ったのである。
随筆難 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
と、義貞は今朝から、二本松の陣地にあって、尊氏が坐乗ざじょうしているにちがいない、その船列中の本船の一檣頭しょうとうを、にらみとおしに、睨んでいた。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
旗艦きかん陸奥むつ檣頭しょうとう高く「戦闘準備」の信号旗に並んで、もう一連いちれんの旗が、するすると上って行った。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
土民の無知はあきれはてましたよ、檣頭しょうとうたかく掲げたみ国の旗章さえとんと存じておらんのでございます、——それ、黒船が来おった、戦がはじまった、こう思うたと云うのでございまして
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
「いで。これからだ」と、董襲とうしゅうにもうながし、かねてしめし合わせておいたとおり、決死、敵前に駆け上がるべく、合図の旗を檣頭しょうとうにかかげた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ただちにルゾン号の無電は、檣頭しょうとうに高くはったアンテナから
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
降参船にはことごとく檣頭しょうとうに青龍の牙旗を立つ。ねがわくは丞相の配下をして、誤認なからしめ給わんことを。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天照大神、八幡大菩薩と、金文字で打出した日輪旗が、中の一檣頭しょうとう燦々さんさんとかがやいている。それこそ尊氏の乗船、足利方の本軍と、新田方には見えたであろう。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
丘には弩弓台どきゅうだいあり石砲楼あり、また江岸の要所要所には、無数の兵船が林のごとく檣頭しょうとうを集めて、国防の一水ここにありと、戦気烈々たるものがあるではないか。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
檣頭しょうとう船尾には幡旗はんき林立して、千櫓いっせいに河流を切りながら、堂々、新野しんやへ向って下江してきた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この船列が、水島灘みずしまなだへかかった日のことである。先頭を切ッて哨戒しょうかいして行く串崎船の檣頭しょうとう
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、その錦の御旗の光輝も今度はなんとなくうすらいで見える。なぜなれば、賊軍と呼びならわしてきた足利勢もまた、水軍の一檣頭しょうとうに、日輪を打ち出した錦の御旗をかかげており
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前列の船団は、すべて紅旗を檣頭しょうとうに掲げ、この一手の大将には、徐晃じょこうが選ばれる。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
美しい一艘の官船が檣頭しょうとう許都きょと政府の旗をかかげて、揚子江ようすこうを下ってきた。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)