模範もはん)” の例文
あるいは社会の指導者または模範もはんともなるような事業であっても、珠盤そろばんとなればいかに勘定かんじょうしても間に合わぬというごときものならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「それじゃ僕が教えてやる」と照彦てるひこ様は模範もはんをしめした。ときどき的にあたる。正三君はしばらく見学した後
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そう云う彼の特色は、少くともこの老将軍には、帝国軍人の模範もはんらしい、好印象を与えた容子ようすだった。将軍はそこに立ち止まったまま、熱心になお話し続けた。
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私のこの点を力説するのは全くそのためで、何も私を模範もはんになさいという意味ではけっしてないのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前業の養鶏奨励の方法は、だんだんくわしく述べるつもりであるが、まあその模範もはんとして一例を示そう。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
都会の中央へもどりたい一心からゆめのような薫少年との初恋はつこい軽蔑けいべつし、五十男の世才力量にのぞみをかけて来た転機の小初は、翡翠型の飛込みの模範もはんを示す無意識の中にも
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
それから歩を返えして、利別としべつ川辺かわべ模範もはん農夫のうふの宮崎君を訪う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
嘉納さんに始めて会った時も、そうあなたのように教育者として学生の模範もはんになれというような注文だと、私にはとても勤まりかねるからと逡巡しゅんじゅんしたくらいでした。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仏教徒諸君、釈迦を見ならえ、釈迦の行為こうい模範もはんとせよ。釈迦の相似形となれ、釈迦の諸徳をみなその二万分一、五万分一、あるいは二十万分一の縮尺スケールに於てこれを習修せよ。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
模範もはん的な同棲者達だ。」
おれみたような無鉄砲むてっぽうなものをつらまえて、生徒の模範もはんになれの、一校の師表しひょうあおがれなくてはいかんの、学問以外に個人の徳化をおよぼさなくては教育者になれないの、と無暗に法外な注文をする。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)