標本室ひょうほんしつ)” の例文
中村はため息をらしながら、爬虫類はちゅうるい標本室ひょうほんしつへ引返した。が、三重子はどこにも見えない。彼は何か気軽になり、目の前の大蜥蜴おおとかげに「失敬」をした。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いま小樽おたるの公園にる。高等商業こうとうしょうぎょう標本室ひょうほんしつも見てきた。馬鈴薯ばれいしょからできるもの百五、六十しゅの標本が面白おもしろかった。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
漁業長と、その助手の小笠原おがさわら老人は、この美しい珊瑚礁の海いったいを、われらの標本室ひょうほんしつといっていた。この二人は、太平洋を、じぶんのものと思っているらしい。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
いや、展覧会場ではない、これは針目博士が、他人にのぞかせることをきらっている密室のひとつなのであるから、極秘ごくひの生きている標本室ひょうほんしつといった方がいいのだろう。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大学生の中村なかむらうすい春のオヴァ・コオトの下に彼自身の体温を感じながら、仄暗ほのぐらい石の階段を博物館の二階へ登っていった。階段を登りつめた左にあるのは爬虫類はちゅうるい標本室ひょうほんしつである。
早春 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お父さんが監獄かんごくへはいるようなそんなわるいことをしたはずがないんだ。この前お父さんが持ってきて学校へ寄贈きぞうしたおおきなかにこうらだのとなかいのつのだの今だってみんな標本室ひょうほんしつにあるんだ。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)