棺槨かんかく)” の例文
はや冬風のすさぶ中、許都郊外の南原なんげんに、立派な棺槨かんかく墓地ぼち)が築かれた——。老母の死後、曹操が徐庶をなぐさめて贈ったものの一つである。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
儒員某ソノ能ヲねたム者アリ。悪言日ニ日ニ至ル。時ニ丹丘老師病メリ。先生すなわちコレヲ省スルニ託シ避ケテ京ニク。実ニ天明てんめい丙午へいご(?)夏四月ナリ。老師卒ス。貧ニシテ棺槨かんかくノ資ナシ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
後にこそ天下の主となりたまいたれ、げん順宗じゅんそう至正しせい四年とし十七におわしける時は、疫病おおいに行われて、御父おんちち御母兄上幼き弟皆せたまえるに、家貧にして棺槨かんかくそなえだにしたもうあたわず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大工にも棺槨かんかくあつらえ、みずからすきをとりて墓を掘り、父老、女房、勇蔵夫婦の朋友を呼びて野辺送りに立たしめたり、阿園が尼になるの一事は、里方は痛く怒りたれど、これも彼が周旋にて
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
呉侯は、呂蒙の死に、万斛ばんこくの涙をそそいで、爵を贈り、棺槨かんかくをそなえ、その大葬を手厚くとり行った後
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成都へ彼の棺槨かんかくを送るの日、玄徳は曠野に立って灰色の雪空を長く仰いでいた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)