枯槁ここう)” の例文
玄奘三蔵の『大唐西域記』巻十二烏鎩国うせつこくの条に、その都の西二百余里の大山頂に卒都婆そとばあり、土俗曰く、数百年前この山の崖崩れた中に比丘びく瞑目めいもくして坐し、躯量偉大、形容枯槁ここう
心神爽快を覚え、浮腫知らずらず、減退して殆んど常体に復し、全く山麓に達するに及びては、いわゆる形容枯槁ここうの人となり、余人は寒気耐え難しといい合えるにもかかわらず
その中に、老人も紙銭の中から出て来て、李と一しょに、入口の石段の上に腰を下したから、今では顔貌かおかたちも、はっきり見える。形容の枯槁ここうしている事は、さっき見た時の比ではない。
仙人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いったんは、虎列剌ころりかとも思いましたが、嘔吐はいたものは虎列剌とはまったくちがう。胸や背に赤斑こそありますが、虎列剌の特徴になっておる形容の枯槁ここうもなければ痴呆面こけづらもしていない。
顎十郎捕物帳:24 蠑螈 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
唖々子は既に形容けいよう枯槁ここうして一カ月前に見た時とは別人のようになっていたが、しかし談話はなお平生へいぜいと変りがなかったので、夏の夕陽ゆうひの枕元にさし込んで来る頃までともに旧事を談じ合った。
梅雨晴 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
柱はかたむきひさしは破れ、形容枯槁ここうして喪家そうかいぬの如く、ここらで金をかけて根本的にテコ入れしなきゃ、大変なことになりそうなのですが、そこはそれ誰の持ち家か判然はっきりしないものですから
ボロ家の春秋 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)