板張いたばり)” の例文
夜皆寝て了うたあとで、母屋おもや段落だんおちで二葉亭訳「うき草」を読んだ。此処ここは引越した年の秋、無理に北側きたがわにつぎ足した長五畳の板張いたばりで、一尺程段落になって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お兄様はと見返ると、板張いたばり薄縁うすべりを敷いたのに、座蒲団ざぶとんを肩にあて、そこらにあった煙草盆から火入れを出し、横にしたのをまくらにして、目を閉じて寝ていらっしゃいます。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
二人を乗せたバケットが自分等の前までさがって来た時、監督をはじめ板張いたばりゆかの上に立っている人々は、我にもあらず、一斉いっせい歓声かんせいをあげた。その中に平吉の声もまじっていた。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
平吉は一男を板張いたばりはずれへれて行って、監督にをむけて立った。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
少年は今まで立っていた板張いたばりから出はずれると、ことさらに手で平均をとる様子もなく、両足をならべて立つはばもない鉄梁てつりょうつたって、ひょいとビルディングの一番外側になっている鉄桁てつげたに足をのせた。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)