来手きて)” の例文
「とても来手きてはねえな。すたり者のねえツていふあまだ。誰が物好きにあんな寺に行つてさびしい思ひをするものがあるもんか。」
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
養子に来手きてでもあれば、それに越したことはないが、母の住江は、別にこの娘に寄つかゝらうといふつもりはないのである。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「何を言うんだ。はははは。この年になって女房が貰えるものか。こっちで貰おうと思っても来手きてがあるまい。」
老人 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「早うなおってもらわんと、こまる。みさきの子どもが、先生をちんばにして、てなことになると、こまるもん。あとへ来手きてがなかったりすると、なおこまる」
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
あの笹刈りがあるために、よそからこの土地へおよめに来手きてがないと言われるくらい骨の折れる仕事ですからね。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
後で聞くと、飛行機乗りと潜水艦乗りとは、お嫁の来手きてがない両大関りょうおおぜきで、このごろは飛行機乗りは安全だという評判で大分いいそうだが、潜水艦のほうは、ますます悪いという話だよ
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とても婿に来手きてはあるまいが、旅の人なら私を憎む訳はないのだから、来てくれるかも知れないと、思いましたから、私は召使いの者を街道へ出して、旅の方に来ていただくことにしたのです。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「看護婦みたような嫁はないかって探しても、誰も来手きてはあるまいな」
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)