たぶ)” の例文
「額広く鼻は高く、きれの長い末上りのきつい目、たぶの無いような耳、おとがい細く一体に面長で、上髭うわひげ薄く、下鬚したひげまばらに、身のたけはすらりと高い方で。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それが終ると、彼は今度は両手の指で両耳のたぶを引張り上げる所作を繰返し始めました。わたくしはゴムのように伸び縮みするあかい耳朶を異様に眺めながら
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「耳ったぶ引っちぎるぞ」とマトヴェイ・サヴィチが呶鳴った、「やくざ者めが。」
女房ども (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
貴方、そんなうなじの上などはくすぐっとうございますわ。ねえ、耳たぶへ……貴方……
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
夜盗のたぐいか、何者か、と眼稜めかどきつく主人が観た男は、額広く鼻高く、上り目の、たぶ少き耳、やりおとがいに硬そうなひげまばらに生い、甚だ多き髪を茶筅ちゃせんとも無く粗末に異様に短くつかねて
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)