本真ほんま)” の例文
ナニイ……サイエン? サイエンが本真ほんまチウのか……馬鹿あ。ヘゲタレエ。スの字が附くと附かぬだけの違いじゃないか。
笑う唖女 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
蝶子は白粉気おしろいけもなく、髪もバサバサで、着物はくたびれていた。そんなところを同情しての言葉だったかも知らぬが、蝶子は本真ほんまのことと思いたかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「輝雄ちゃんその友達に見られて、な顔して、困った困った云うねん。何でか云うたら、こいさんと一緒やったら、あれ僕の叔母さんや云うたかて本真ほんまにせえへん、………」
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「西へ行く日の、はては東か。それは本真ほんまか。ひがし出る日の、御里おさとは西か。それも本真か。身は波の上。戢枕かじまくら。流せ流せ」とはやしている。へさきへ行って見たら、水夫が大勢寄って、太い帆綱ほづな手繰たぐっていた。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
剃刀屋で三月みつきほど辛抱したが、やがて、主人と喧嘩けんかしてしゃくやからとて店を休み休みし出したが、蝶子はその口実を本真ほんまだと思い、朝おこしたりしなくなり、ずるずるべったり店をやめてしまった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
いつまでもお前にヤトナさせとくのも可哀想や。それで蝶子、明日あした家の使の者が来よったら、別れまっさときっぱり言うて欲しいんや。本真ほんまの気持で言うのやないねんぜ。しし、芝居や。芝居や。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)