曾孫ひまご)” の例文
新字:曽孫
その頃からの詩人にておはし候桂月様、なにとて曾孫ひまごのやうなる私すらおぼろげに知り候歌と眼の前の事との区別を、桂月様どう遊ばし候にや。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
孔子の語の最初の編纂の背後に、孔子の孫弟子(あるいは曾孫ひまご弟子)の経営する学園が存したということは、否定することができないのである。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
現在の少年少女が老い尽し、彼らの孫曾孫ひまご嬉々ききとしてひざの前に遊びたわむるるを見る時代には、この一巻の文章は果してどうなっているであろうか。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
先ず親玉から子玉が生れ、その子玉から孫玉が出て、それからまた曾孫ひまごが出た。そしてその代のかわには、赤や青の煙の塊が飛び出すのであった。
雑記(Ⅱ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ところで、これと似ている逸話の持ち主に了然尼りょうねんにという尼もある。前の慧春尼けいしゅんにより時代はずっと下がって、武田信玄の曾孫ひまご、武田寿庵の妻だったという前身だ。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
松篁の嫁を迎えるのも見、曾孫ひまご三人の遊ぶのを眺めて、幸せな晩年を送ったのでした。
わが母を語る (新字新仮名) / 上村松園(著)
身體の二つに折れ曲つたやうな年寄りが、娘、孫、曾孫ひまごまでを從へて來る。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
「お前は賢彌じゃろうな、するとお前はわしの曾孫ひまごじゃ」
岩魚 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
だから最古の記録によってこれらの教師に接しようとするものでも、曾孫ひまご弟子の立場より先に出ることはできない。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
気持のいい谷川の瀬の音と電車の音とは実は従兄弟いとこである。それから電車のポールの尖端から出る気味の悪い火花も、日本アルプスを照らす崇厳すうごんな稲妻の曾孫ひまごくらいのものに過ぎない。
電車と風呂 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)