旧弊きゅうへい)” の例文
旧字:舊弊
曲げられない旧弊きゅうへいの家憲や、困難な事情も、どちらも可愛いい一人娘と、息子の為にと、曲げさせた上、やっとまとまった両家の縁組なのだった。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とて懐よりり出したは、旧弊きゅうへいであります故小さい合口を隠し持って居ますから、柄へ手を掛けて懐から抜きにかゝると
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
……気の毒だといったらいいのか馬鹿だといったらいいのか、わたくしには何とも言えません。……佐渡屋は、四谷、麹町でも名の通った旧弊きゅうへいな家風。
地方は何処も大抵然うですが、こゝは殊に旧弊きゅうへいのようですよ。何でも昔の通りでないと承知しません。それですから田舎へ行くと百姓が私達を洋服を着て靴を
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
三月のひなや五月ののぼりなどを弄ぶということが非常に旧弊きゅうへいのようにいわれて、そんなものを人が振り返っても見なかった時代が暫くはあったようである。私はその時代をかすかながら知っている。
日本橋附近 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
(現に須永は母の御供をしてこういう旧弊きゅうへい真似まねを当り前のごとくやっている。)それから鉄無地てつむじの羽織でも着ながら、歌舞伎を当世とうせいくずして往来へ流したにおいのする町内を恍惚こうこつと歩きたかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
... 景色なら、少しくらい旧弊きゅうへいでも差支えないと云う訳か。』私『まあ、景色だけは負けて置こう。』三浦『所が僕はまた近頃になって、すっかり開化なるものがいやになってしまった。』私『何んでも旧幕の修好使しゅうこうしがヴルヴァルを ...
開化の良人 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「京都の商人というと旧弊きゅうへいでしょうな?」
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)