旋毛曲つむじまが)” の例文
それとは事かわりますが、世の中には、めたいのだが、他人があんまり感心するから嫌だといったふうな旋毛曲つむじまがりがかなりにあります。
平塚明子(らいてう) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『君は一體、人に反對する時に限つて能辯になる癖があるね。——餘つ程旋毛曲つむじまがりだと見える。よく反對したがるからねえ。』
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
幸にして主人のように吾輩の毛をややともすると逆さにでたがる旋毛曲つむじまがりの奇特家きどくかがおったから、かかる狂言も拝見が出来たのであろう。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一草亭が思ひついたやうに、この二人が無事に顔を合はせたところで、あの通り旋毛曲つむじまがりの人達だけに、二人はまさか小説の話や俳諧の噂もすまい。
十九世紀のロシアの大ピアニストにして、旋毛曲つむじまがりのルービンシュタインは、シューベルトの「白鳥の歌」の一つなる「いこいの地」を聴いてこう言った。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
如何なる人が何と云っても自分のに落ちるまでは決して鵜呑みにしないという事である。この旋毛曲つむじまがりの性質がなかったら科学の進歩は如何どうなったであろうか。
こういう旋毛曲つむじまがりの「アマノジャク」は始終であって、一々記憶していないほど珍らしくなかった。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
珍々先生は生れ付きの旋毛曲つむじまがり、親に見放され、学校は追出され、その後は白浪物しらなみものの主人公のような心持になってとにかくに強いもの、えばるものが大嫌いであったから
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ソノ下ニ台石だいいしヲ据エテ、ソノ前ニ線香立テノ穴ト手向ケノ水ヲ供エル穴トヲ穿ッテアルアノ形式、アレハイカニモ平凡デ、俗ッポクッテ、何事ニモ旋毛曲つむじまがリノ予ニハ気ニ入ラナイ。
瘋癲老人日記 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いくら旋毛曲つむじまがりの井口君でもそれに反対はないさ。しかしあの男は犯罪を専門に研究しているんだから、頭脳あたまの中に石川五右衛門以来の知識が醗酵はっこうしている。彼奴ぐらい巧者こうしゃな泥棒はまず絶無の筈だ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「——雷鳴は鳴る時だけ樣をつけ——とね、雷鳴を好きだといふ旋毛曲つむじまがりも少ないが、お前のやうに、四つん這ひになつて逃げ出すのも滅多にないよ。あの恰好を新造衆に見せたかつたな」
この画は今何処どこにあるか、所有者が不明である。元来椿岳というような旋毛曲つむじまがりが今なら帝展に等しい博覧会へ出品して賞牌をもらうというは少し滑稽こっけいの感があるが、これについて面白いはなしがある。