旅硯たびすずり)” の例文
まず田代玄甫たしろげんぽの書いた「旅硯たびすずり」の中の文によれば、伝吉は平四郎のまげぶしへたこをひっかけたと云うことである。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
旅硯たびすずりとり出でて、御灯みあかしの光に書きつけ、今一声もがなと耳をかたぶくるに、思ひがけずも遠く寺院の方より、七三さきふ声のいかめしく聞えて、やや近づき来たり。
これもここでのぞみの達せらるるきざしか、と床しい、と明が云って、直ぐにこの戸棚を、卓子テエブルまがいの机に使って、旅硯たびすずりも据えてある。椅子がわりに脚榻きゃたつを置いて。……
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのくせ文人墨客ども、きっとここへ来ると旅硯たびすずりを取り出し、何か彼かむやみにひねくるのだがな
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
何本かの画筆であり旅硯たびすずりであり絵の具であり画冊であった。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「伝吉のありかには気づかずありけん、悠々と刀など押し拭い、いずこともなく立ち去りけり。」(旅硯たびすずり
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)