旅扮装たびいでたち)” の例文
白の振袖、あやの帯、くれない長襦袢ながじゅばん、胸に水晶の数珠じゅずをかけ、襟に両袖を占めて、波の上に、雪のごとき竜馬りゅうめに乗せらる。およそ手綱の丈を隔てて、一人下髪さげがみの女房。旅扮装たびいでたち
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
旅扮装たびいでたちのこんがらとせいたかは、新九郎の身の上を聞きながらぶらぶらと本郷台へかかって来た。そこから見ると、浅草川を中心に下町の灯がチラチラと美しく眺められた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬の背には、鎧櫃よろいびつ行李こうりとを振分ふりわけに附けている。そこからにこにこと赭顔あからがおに笑みをたたえて来る白髪の老武士は、陣笠をかぶり、手甲てっこう脚絆きゃはんのきびしい旅扮装たびいでたちに体をつつんでいた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
別辞わかれを交わしていた好青年である。若衆小袖を旅扮装たびいでたち凛々りりしくくくり、前髪の元結もとゆいも匂やかに、大太刀を背に負い、身のこしらえ、まなざしや構え、なにしろ花やかに見うけられる。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)