きやう)” の例文
当時霞亭は既に江戸嚢里なうりの家に歿してより九十五日を経てゐた。妻井上氏きやう神辺かんなべに帰る旅が殆ど果てて、「帰宅明日にあり」と云ふことになつてゐた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
先づ茶山をして心を労せしむるのは姪女てつぢよきやうの病であつた。敬は二年前に江戸に於て夫北条霞亭を喪ひ、幼女とらを神辺かんなべに帰り、前年の秋に又其幼女をさへ喪つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
想ふに平生筆をることの極めて自在なるより、期せずしてひ得たのであらう。妹姪まいてつは未だその誰々たるかを知らない。しかし井上氏きやうが其中にあつたことは明である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)