救恤きゅうじゅつ)” の例文
折も折、独逸ドイツの方では、戦後の救恤きゅうじゅつに対する大功労者として、提琴家クライスラーのために、国民的大感謝祭が行われている最中であった。
もちろんそれは単に微禄の士を救恤きゅうじゅつするというだけではなく、武と農とを合致させることによって質実の風をやしなう意味もあったのであるが
日本婦道記:春三たび (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
第二の意味における貧乏なるものは、救恤きゅうじゅつを受くという意味の貧乏であって、その要素は「経済上の依頼エコノミック・デペンデンス」にある。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
抽斎は留守居比良野貞固さだかたに会って、救恤きゅうじゅつの事を議した。貞固は君侯在国の故を以て、むねくるにいとまあらず、直ちに廩米りんまい二万五千俵を発して、本所の窮民をにぎわすことを令した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
秀吉はまず朝廷の疲弊ひへいしきった経済面に貢献こうけんをはかり、貧しい公卿を救恤きゅうじゅつするに努めた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえば饑饉には救恤きゅうじゅつの備えをなし、外患がいかんには兵馬を用意し、紙幣下落すれば金銀貨を求め、貿易の盛衰をみては関税を上下する等、俗言これを評すれば掛引かけひきの忙わしきものなるがゆえに
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
夜番に、見回りに、ごく困窮な村民の救恤きゅうじゅつに、その間、半蔵もよく働いた。彼は伏見屋から大坂地震の絵図なぞを借りて来て、それを父と一緒に見たが、震災の実際はうわさよりも大きかった。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
天明三年に起こったところの、東北地方の大饑饉、死人の肉をさえ食したという、大饑饉の時この郡兵衛は、その地方へ出かけて行き、あらゆる救恤きゅうじゅつの働きをした。その際冬次郎も出張っていた。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
佐貝さかいの港へ前触れもなく五艘の船が入った、前触れはなかったが、入港と同時に大変な触れが出た、「加賀、薩摩さつま、仙台の三大藩主から、佐貝市民に贈る救恤きゅうじゅつ物資の到着」
これ従来の貧民救恤きゅうじゅつと全くその精神を異にするところにして、かかる思想が法律の是認をるに至りたる事は、けだし近代における権利思想の一転期を画すべきものである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)