故事ふるごと)” の例文
「なんだって好い。打ちせえすりゃあ、講釈で聴いて知っているしん予譲よじょう故事ふるごととやらだ。敵討の筋が通るというもんさ」
怪異暗闇祭 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
が、あいにくこの私本太平記のうえでは、六百二十年前の歴史の故事ふるごとではあるが、隠岐おきへ島流しとなる後醍醐天皇のみじめなくだりを次回から書かねばならない。
随筆 私本太平記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(よしこの故事ふるごとが、へんな夢を、訳ありげに粉飾させてもよんどころないことだ。……)
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
静の故事ふるごとなど——外に向っては、天下の経綸を論じ、且、行うのは、大丈夫だいじょうふの本懐なり、又、使命でもござりまするが、内へ入って、喃々なんなんと、惚れた女の手玉にとられるのも、人間、男女の
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
女子をなごさかりは十年ととせとはなきものになるに、此上こよなき機會をりを取りはづして、卒塔婆小町そとばこまち故事ふるごとも有る世の中。重景樣は御家と謂ひ、器量と謂ひ、何不足なき好き縁なるに、何とて斯くはいなみ給ふぞ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「知らぬか、廷尉。——大義タイギシンメツス、とあるのを。異朝いちょうでもそれが新しい朱子しゅしの学として奉じられておる。遠い魏朝ぎちょうにあった故事ふるごとなどは早やカビ臭いわ。……いや、坊門どの」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……よりよりに夜のふけて。さりさりに寒きに。ふりちゆう睾丸ふぐりを、ありちゆう、あぶらむ」と、三たび舞い歌って大喝采をはくしたというあの故事ふるごとを、田楽化したものだった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)