攪拌かくはん)” の例文
清逸の心はこのささやかな攪拌かくはんの後に元どおり沈んでいった。一度聞耳を立てるために天井てんじょうに向けた顔をまた障子の方に向けなおした。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
映画の場合は、それは美しき流れを乱し、時間を攪拌かくはんする。しかし私はこれらの結論を理論の中から導き出したのではない。
演技指導論草案 (新字新仮名) / 伊丹万作(著)
これの水の中に沈澱させる装置をハナおけ、その前に垂れおけの中で攪拌かくはんするかいのような木をハナ起しというなど、いろいろの道具が具わっている。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
神秘な問題はこれを外部からるのみで、それを推究することなく、それを攪拌かくはんすることなく、それをもっておのれの精神をわずらわすことなく
それに金米糖の心核となるべき芥子粒けしつぶを入れて杓子しゃくし攪拌かくはんし、しゃくい上げしゃくい上げしていると自然にああいう形にできあがるのだそうである。
備忘録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
例えば、屍体が溶けて濃度が或る個所だけ濃くなり過ぎると、直ぐその部分が変質して不溶解性ふようかいせい新成物しんせいぶつを生ずる。そこに攪拌かくはん六ヶ敷むずかし手際てぎわが入用だ。
殺人の涯 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それによく攪拌かくはんした、クリーム三デシリットルを加える。これを黄金色に平に焼いて料理場で用意して置く。
食魔に贈る (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
これを米といっしょにおかゆに煮て、出し汁をかけて食べるのも一方法であり、また、一法としては、微塵みじん肉にした鳥を、味付け煮にして、出来上がったお粥の中へ加えて、攪拌かくはん
死と恋との、悩みの中における両種の物の攪拌かくはんは、一そう強い甘美な酒を醸成する。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし我々の葛湯くずゆのこしらえかたのように、簡単にできるものなら何でもこうしてかいて食ったもので、カクというのは攪拌かくはんすることであったらしい。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
だいたい同じような割合に交じり合うのであるが、この状況を写した映画のフィルムを逆転する場合には、攪拌かくはんするに従って米と小豆あずきがだんだんに分離して
映画の世界像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)