たずさわ)” の例文
やがて、あのフィルムは、警視庁へ移送されてその犯罪捜査にたずさわった一同の役人並に庁内ちょうない主脳者しゅのうしゃの前で、たった一度だけ試写された。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それを今まで自らたずさわって来た俳句というものの伝統的価値を忘れて、これを根本からくつがえし去ろうとした所に誤りがあったのである。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
同じ文字のことにたずさわってながらこんなに立場が違うのはどういうわけであろうと倉皇そうこうのあいだに考えてみた。
仇討たれ戯作 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ところがポオは、クロムリンの鑑別にたずさわったことを書いて後、死体の状態を記述して精細を極めている。
産額で一番大きなものの一つは団扇うちわであります。丸亀まるがめ市がその産地で、特に塩屋しおやはその中心であります。年額は三百万円を超えこれにたずさわる工人は三千人と称します。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
細川三斎はすこぶる武芸を好んだ人であった。岩流を独創した小次郎と二天一流を発明した武蔵とは、武道にたずさわる者として知らない者の無い名である。興長の話を聞いてすぐ許した。そして
巌流島 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
曾根は女の力でささえられたような家族の中に居て、又、女の力で支えられたような芸術にたずさわっていた。時とすると、彼女の言うことは、岩の間を曲りくねって出て来る水のように冷たかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
わずか十二戸、三、四十人余りの人がたずさわっている仕事に過ぎなくはあるが、語るに足りる様々な事柄がある。今まで詳しく伝えた人がないので、代って筆を執りたいのである。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
病気さえしなかったならば今頃文筆にたずさわっているかどうかすこぶるあやしいくらいであるから、氏の名高い処女作「レモンの花咲く丘へ」という戯曲についても何事も知らなかったのである。
国枝史郎氏の人物と作品 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
父の亡くなる頃は、彼も地方に居て、郡会議員、県会議員などに選ばれ、多くの尊敬を払われたものであったが、その後都会へ出て種々な事業にたずさわるように成ってから、失敗の生涯ばかり続いた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)