持堪もちこた)” の例文
引手茶屋は、ものの半年とも持堪もちこたえず、——残った不義理の借金のために、大川を深川から、身をさかさまに浅草へ流着ながれついた。
第二菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼等が滅亡の日に出會すと、ちやうどかうした巨大胃の病人が食斷ちしたやうに、少しの持堪もちこたへもなく死んでしまふ。
飛鳥寺 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
妻の働いているうちは、どうかこう持堪もちこたえていた家も、古くから積り積りして来ている負債のかたに取られて、彼はささやかな小屋のなかに、かろうじて生きていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
権柄けんぺいにこういいましたが、二官の体はゆるぎもせず、依然として、四、五間の距離を持堪もちこたえている。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
強気で持堪もちこたえた激情が、一ぺんに破裂したのでしょう。
「はい……」人夫頭は面目めんもくなささうに頭へ手をやつた。「何だつて申しますと、此奴こいつの拵へるお料理は、どうもおなか持堪もちこたへがなくつて、直ぐ腹が空いちまふもんですからね。」