拾読ひろいよみ)” の例文
新聞を拾読ひろいよみしていたお政は眼鏡越しに娘を見遣みやッて、「欠びをして徒然つくねんとしていることはないやアね。本でも出して来てお復習さらいなさい」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
大石が東京新聞を見てしまって、傍にかさねて置いてある、外の新聞二三枚の文学欄だけを拾読ひろいよみをする処へ、さっきの名刺の客が這入ってきた。二十二三の書生風の男である。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
離魂病りこんびょうなんかてえ病気があるもんか、篦棒べらぼうくせえこたア言わねえもんだ、大方支那の小説でも拾読ひろいよみしアがッて、高慢らしい顔しアがるんだろう、と仰しゃるお客様もありましょうが
一対校競技すらも為し得ざる学校!僕は実に気の毒で堪らぬ。昨夜も偶然書庫の隅から三田評論の学生大会記念号を探して、拾読ひろいよみに読んで居ると、実に感慨胸に充ちて堪らなくなつて仕舞つた。
痛む頭をもたげし小花が虫を押へて拾読ひろいよみするその文にいわく、一筆ひとふでしめし上参あげまいらせそろ、今は何事をも包まず打ち明けて申上げ候ふ故、憎い兼吉がためとお思なく可哀い清さんのためと御読分およみわけ下されたく候
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)