把手ノッブ)” の例文
僅かな力で把手ノッブを捻じられた扉が、音もなく開くと、思いもかけぬ赤い光りの隙間が、彼の鼻の先に、縦に一直線に出来たのであった。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と云うのは、その古風な柄の長い鍵は、把手ノッブから遙かに突出していて、前回の技巧を再現することがほとんど望まれないからであった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
私は、兩手で、一二秒は云ふことをきかなかつた、かたい把手ノッブを𢌞しながら、「誰が呼んだのだらう?」と、心ん中で問うた。
妙子さんの部屋の前まで来ると、博士はドアの把手ノッブを廻して見て
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ボーイは把手ノッブをつかんで、押してみた。
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、片方の糸を——解けない方だよ——把手ノッブの角軸に結びつけないで二回り程からめておいて、間をピインと張らせておく。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「部屋の中には、リード伯母さんの外に、誰がゐるのだらう?——男かしら、女かしら?」把手ノッブが𢌞つて、ドアが開いた。
そうしてサモサモ嬉しそうにドア把手ノッブを押しながら、内側へ消え込んで行ったが、やがて間もなく、眼をマン丸にして重たいを引き開くと、一散に階段を馳け降りて来た。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところが、この奥の室には、先刻さっきから朝枝という娘がいるそうだけど、こんな静かな中で、盲人の聴覚が把手ノッブひねり一つ聴きのがすものじゃない。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そのうちにストーン氏は玄関の入口の垂れ幕を引き退けて、玄関の横のドア把手ノッブに手をかけた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
なお、兇行に使用された拳銃は、ドアの外側——把手ノッブの下に捨てられていて、その扉には、外から起倒かんぬきが掛っていた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
と水夫長は見向きもせずに怒鳴りながら、ガチャガチャと把手ノッブねじった。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところで、それは一本の丈夫な紐なんだ。犯人は、それを把手ノッブとその右寄りの板壁の隙間に挾んだ鍵との間に、六、七寸の余裕を残して張ったのだよ。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それから大きな真鍮しんちゅう把手ノッブを引くと、半開きになった扉の間から、浅黄色のエプロンを掛けた五十位の附添人らしい婆さんが出て来て、叮嚀に一礼した。その婆さんは若林博士の顔を見上げながら
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
左手の不随なラザレフは床に手燭を置いて右手で把手ノッブを廻してから、左の肩口で扉を押して出ようとしたのだが、あいにく扉は紐の間隔しか開かないから
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
把手ノッブの上に在る右手の不完全な指紋が直ぐに眼に付いた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ところが、その室を出ようとしたとき、彼はその把手ノッブを握りしめたまま、唖然と立ち尽してしまった。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ピカピカ光る真鍮しんちゅう把手ノッブが四つずつ、両側に並んでいる。
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
もはや躊躇ちゅうちょする時機ではない——熊城が狂暴な風を起して、把手ノッブを引きちぎらんばかりに引いた時、その時なんと思ってか、法水が突如けたたましい爆笑を上げた。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
ドア把手ノッブ後手うしろでに掴んでヤッと身体からだの重量を支えた。
幽霊と推進機 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
やがて私は、パドミーニが出しわすれていた三角スポンジを手に、把手ノッブをやんわりとひねっていました。が、実のところは、動作に現われているような、そんな落着きはないのです。
一週一夜物語 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
扉の把手ノッブしっかりと掴んだ。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)