あず)” の例文
晩方少し手隙てすきになってから、新吉は質素じみな晴れ着を着て、古い鳥打帽を被り、店をお作と小僧とにあずけて、和泉屋へ行くと言ってうちを出た。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ごうが煮えてたまらんから乃公は直ぐ帰国かえろうと支度したくを為ているとちょうど高山がやって来て驚いた顔をしてこう言うのだ、折角連れて来たのだから娘だけは井下伯にでもあずけたらどうだろう
富岡先生 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
二階に寝ていた叔父が起きて来てから、芳村は昨夜ゆうべあずけておいた鞄を提げ出して、やがて友達と一緒に帰って行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
浅井の家では、若い女中が一人殖えたり、田舎からあずけられた、浅井の姉の子だという少年が来ていたりして、たまにはたから来ているお今が、軽い反感を覚えるほど賑やかであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
母親があずけてよこした着物や、麦粉菓子むぎこがしのようなものが届いて、着物のなかから可愛い末の子に心づけてくれた小遣い銭などが出て来たが、家をやっている兄の方にはあまり信用がなかった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)