手間取てまど)” の例文
相応な農家で娘を嫁にる日、飾り馬の上に花嫁を乗せて置いて、ほんのすこしの時間手間取てまどっていたら、もう馬ばかりで娘はいなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのうち余り手間取てまどるので、安立、遠山、斎藤の三人がのぞきに這入つた。離座敷には人声がしてゐる。又持場もちばに帰つて暫く待つたが、誰も出て来ない。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこへ五十すぎくらいの洋服の人が出て来ました。主人でしょう。黒いきれかぶって、何かと手間取てまどります。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
それでも、お雪は急に暇乞いとまごいをして立ち出でるわけにもゆかずに、後家さんの戻るのを待っていたが、その戻るのが意外に手間取てまどれるので、もどかしく思いました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
相応そうおう流行はやって、薬取くすりとりも多いから、手間取てまどるのがじれったさに、始終くので見覚えて、私がその抽斗ひきだしを抜いて五つも六つも薬局の机に並べてる、しまいには、先方さきの手を待たないで
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)