手擦てすり)” の例文
彼は椅子の手擦てすりもたせた隻手かたての甲の上に、口元に黄金きんを光らしたほおななめに凭せるようにしていた。と、時計が九時を打った。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小野さんは橋の手擦てすりに背をたせたまま、内隠袋うちがくしから例の通り銀製の煙草入を出してぱちりとけた。はくを置いた埃及煙草エジプトたばこの吸口が奇麗に並んでいる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小野さんは両肘りょうひじを鉄の手擦てすりうしろから持たして、山羊仔キッドの靴を心持前へ出した。煙草をくわえたまま、眼鏡越に爪先の飾をながめている。遅日ちじつ影長くして光を惜まず。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)