手宛てあて)” の例文
まあ、ね、病院も上等へ入れて手宛てあては十分にしてあるのだから、決して気遣きづかひは無いやうなものだけれど、何しろ大怪我だからね。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
この牧場の管理人から月に十円の手宛てあてもらっていることや、自分は他の牧場からこの西にしいりの沢へ移って来たものであることなどを話した。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
兄はお縫さんの所から毎月彼女の母の方へ手宛てあてが届く事をどうしてか知っていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
夫婦は心をあはせて貫一の災難をかなしみ、何程のつひえをもをしまず手宛てあての限を加へて、少小すこしきずをものこさざらんと祈るなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
巣山すやま明山あきやまの差別、無智な人民の盗伐などは、三吉も聞知っていることであるが、なお森彦は地方を代表して上京したそもそもから、しまいには一文の手宛てあてをも受けず
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)